広島・江田島1泊2日の旅

広島で自転車といえば、しまなみ海道やゆめしま海道が真っ先に思い浮かぶ。……が、今回はあえて少しひねって、江田島市と呉市を結ぶ風光明媚なサイクリングロード「かきしま海道」を走ることにした。
翌日のライドに備え、前日のうちに東京駅から新幹線輪行で広島へ。行程は少々タイトな1泊2日で、実際に走るのは1日だけ。それでも江田島と呉のコンテンツ量は想像以上で、気づけば「これは濃い…」と唸ってしまうほどの満足度だった。そんな広島・江田島の自転車旅を、今回もレポートでお届けする。
※本記事は中国地方知事会サイクリング観光振興実行委員会の提供を受けています。
新幹線輪行で前泊の広島入り

前日の午後、東京から新幹線に乗って広島へ。所要時間は約4時間と、なかなかの移動だが、旅の前なら不思議と苦にならない。前泊したのは、広島駅から徒歩5分ほどのアパホテル〈広島駅新幹線口〉。客室では輪行袋に入れたまま保管が必要だったため、ライド当日朝にロビーで輪行を解除してライドの準備を進める。

準備を整えてライドスタート。江田島へ渡るフェリーに乗るため、広島港まで約6kmを市内ライド。平日の朝とあって駅周辺は車の交通量がやや多く、周囲に気を配りながら港を目指す。

広島市内には路面電車が走り、朝から通勤や通学でフル稼働。その横を自転車で走れるという、なかなか貴重な体験ができるのも広島市内ならではだ。
広島港宇品旅客ターミナル

走ること約30分で広島港に到着。ここは路面電車の終着駅(広島港駅)でもあり、さまざまな車両が停車している。気づけば自転車そっちのけで電車を眺めてしまう。

駅直結になっているのが、広島港宇品旅客ターミナル。ここからは江田島をはじめ、瀬戸内のさまざまな島へ向かう船が発着している。

宇品から江田島・切串までの乗船券(470円)と、自転車運賃の特殊券(190円)を窓口で購入。

乗船まで少し時間があったので、ターミナル内のパン屋(カフェ&ベーカリー ニューポート)で朝食を調達。ボリュームたっぷりのサンドイッチとホットコーヒーを購入。

フェリーを待つあいだに、サンドイッチとコーヒーで朝食タイム。あいにくの曇り空ではあるが、今のところ雨はなんとか踏みとどまってくれている。「このまま頼む…」と心の中でお願いしつつ出航の時を待つ。

そうこうしていると、切串行きのフェリーが到着。順番に案内され、自転車と一緒にそのまま乗船する。この瞬間は、何度経験してもやっぱりワクワクする。

自転車はそのままフェリーの壁に立てかけるスタイル。固定もシンプルで気楽だ。ペダルを止めて船に揺られる時間が加わるだけで、旅情感は一気に爆上がり。

フェリーの2階が客室になっており、広々とした空間にフカフカの椅子が並ぶ。自転車を気にする必要もなく、ここでは完全にオフモード。海を眺めながら、約30分の船旅をゆったりと楽しんだ。
いざ上陸、かきしま海道へ

船はほとんど揺れることもなく、予定通り切串港に到着。無事に江田島へ上陸。今回走る「かきしま海道サイクリングロード」は、切串から呉までを結ぶ約70kmのサイクリングロード。

かきしま海道の名前の由来は、牡蠣(かき)と花卉(かき)の名産地である島々を巡る海辺の道からきているそうだ。走る前から、なんだかおいしそうで華やかな名前に期待が高まる。※花卉とは、観賞用として栽培される花や植物全般のこと。

走り始めから瀬戸内海を横目に眺めながら進めるのは、なんとも贅沢な時間。路面には分かりやすいブルーラインが引かれており、ルートに迷うこともなく、景色に集中して気持ちよく走ることができる。

道沿いには、江田島名産の柑橘がたわわに実っている。さすがは瀬戸内海、冬でもどこか空気がやわらかく、温暖な気候を肌で感じる。走っていても、どこかのんびりした気分になる風景だ。

事前のスポット募集で教えてもらった「浜田省吾ゆかりのバス停」に立ち寄る。シンガーソングライターの浜田省吾さんが実際に座っていたベンチや当時のバス停の様子を、江田島市が丁寧に再現。小・中学校時代を江田島町で過ごした浜田さんの原風景に触れられる場所だ。

けんたさんも私も、いわゆる“はましょー世代”ではないため深く語れるわけではないが、そこはしっかり撮影モード。サングラスをかけてベンチに座り、お決まりのポーズで一枚。平日にもかかわらず、ファンの方が見学に訪れており、その人気の根強さを実感した。

江田島を走っていて気付いたのが、ところどころに設置されているバイクラックの存在。簡易的なものではなく、写真のようにしっかり固定されたタイプで、高さや安定感も申し分ない。安心してバイクを預けられる環境が整っているのは、サイクリストにとってかなりうれしいポイントだ。
古民家カフェでランチタイム

小腹も空いてきたところで、少し早めのランチタイム。古民家を改装した「喫茶のら」に立ち寄る。1階部分がカフェとして営業しており、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり食事を楽しめる。実は一日一組限定の体験民宿としても利用できる。

けんたさんは江田島名物の「カキフライ定食」(1,300円)を注文。主役の牡蠣はもちろん、付け合わせに至るまで地元食材をふんだんに使ったランチ。

今年(2025年)は牡蠣があまり獲れず、身はやや小ぶりとのことだが、ひと口かじれば中はしっかりジューシー。サイズは控えめでも、味の満足度はしっかり江田島クオリティだった。
ほどよい登りが待つ後半戦

お腹を満たしてライドを再開。ルート沿いの海に目をやると、さきほどランチでいただいた牡蠣が養殖されている様子が広がっている。

江田島は海沿いを走るだけのイメージだったが、実際にはちゃんと登りも用意されている。とはいえ斜度も距離もきつすぎず、ほどよいアクセント程度。平坦だけでは物足りないサイクリストにも嬉しい、飽きのこないルートだ。

予報通り、昼過ぎから小雨の中を走っていると、前方から一人のサイクリストが。すれ違いざまに声をかけてくれたその方、なんと前日のけんたさんのSNSで江田島ライドを知り、夜勤明けのまま広島市内から江田島へ渡り、ぐるぐる走って遭遇を狙っていたという。無事に会えて本当によかった。こんな出会いがあるのも、旅と自転車の醍醐味だ。
香りに誘われて老舗醤油店へ

ライド開始から約45kmを走り、江田島市の中心街に到着。ここで、けんたさんが事前にリサーチしていた 濵口醬油店 に立ち寄ることにした。

濵口醬油店は創業170年を誇る老舗。店内に一歩足を踏み入れると、ふわっと甘い醤油の香りに包まれる。壁一面には受賞歴を示す表彰状や有名人のサインがずらり。

おすすめされた「これ一本味付け醤油」をお土産に購入。ミニボトルも用意されているので、自転車バッグにもすっぽり収まるのがうれしい。後日、自宅で使ってみると、その甘さにびっくり。砂糖やみりん、だしの旨みが詰まっていて、これ一本で和食の味付けが決まる。旅の余韻が続く、記憶に残る一本だ。

店舗の裏手に回ると、そこには醤油工場のレンガ造りの壁が広がっていた。年月を重ねた質感がなんともフォトジェニックで、思わず足を止めて見入ってしまう。醤油の香りと相まって、どこかロマンを感じさせる風景だった。

醤油店を見学しているうちに雨はすっかり上がり、路面もいい具合に乾いていた。まさにタイミングは完璧。そろそろコーヒー休憩が恋しくなってきたこともあり、気分を新たに呉を目指して走り出す。
ご褒美タイム Sugos cafeでひと息

到着したのは「Sugos cafe」。江田島市と呉市を結ぶ早瀬大橋のたもとにあるカフェだ。ここにもきちんとバイクラックが設置されていて、サイクリスト的には思わず気持ちが緩むポイント。「わかってるなあ」と、うれしくなる一軒。

カフェだけでなく撮影スタジオも併設された複合施設で、外観も思わず足を止めたくなるおしゃれさ。敷地内にはグランピング施設もあり、宿泊も可能だという。次回訪れた際の宿泊の拠点としても、候補に入れておきたくなる場所だった。

店内の窓からは、瀬戸内海を挟んで呉市側の倉橋島を一望でき、食事をしながら景色までしっかり楽しめる。テラス席も用意されているので、天気のいい日は間違いなく気持ちいい。

店内で焼き上げたガトーショコラとカフェラテを注文。添えられた江田島産のオレンジがほどよいアクセントになり、ここでも島の食材を大切にしていることが伝わってくる。走ったあとの身体に、ちょうどいい甘さだった。

窓の外には穏やかな景色が広がり、「ここ住めるよね」「いや、住みたい」と2人でぶつぶつ。気づけば時間が一瞬で溶けそうだったが、名残惜しさを振り切って、そろそろ再び出発することにした。
江田島から呉へ

倉橋島(呉市)へと続く早瀬大橋を渡る。工事中のため片側交互通行で、信号待ちのあいだは瀬戸内海をぼんやり眺める絶好のタイム。橋を渡りきれば、いよいよ旅は後半戦の呉市へ突入だ。さらば江田島!

倉橋島に渡り、ゴールの呉駅までは残り約20km。道路にはところどころにルート表示もあり、呉市側もサイクリストにやさしい印象だ。

穏やかな瀬戸内海に、少しずつ夕陽が沈んでいくのを横目に走る。本当に静かで、時間がゆっくり流れているような感覚だ。海と山が折り重なる瀬戸内らしい立体的な景色は、眺めていてまったく飽きない。

釣士田(りょうしだ)という港町を走っていると、思わず足を止めてしまう風情ある路地に出会った。石積みの塀と静かな家並み。通り過ぎるのが惜しくて、自然とカメラを向けていた。

どこか懐かしさを感じさせる港町の風景と、やわらかな太陽の光のコントラストがとても美しい。車ではきっと気づかずに通り過ぎてしまうような景色に出会えるのも、自転車旅ならではの魅力だ。

呉市と倉橋島を結ぶ 音戸大橋(おんどおおはし)。音戸の瀬戸に架かる赤いアーチ橋で、音戸側は日本初の2層半螺旋型高架橋。くるくると高度を上げて海を渡る、走って楽しい名物橋だ。

初めて体験する独特の登りに、思わずテンションも上がる。道幅が狭く後続車両が追い越せないため、ここは気合を入れてノンストップで一気に頂上まで登り切った。
ものづくりの街・呉へ

呉市内に近づくにつれて、周囲の景色は少しずつ工業地帯の表情へと変わっていく。写真に写っているのは、日本製鉄(株)瀬戸内製鉄所呉地区の解体現場。広大な敷地に佇む巨大な建造物は、遠目からでもそのスケール感がはっきりと伝わってくる。

アレイからすこじまは、海上自衛隊の潜水艦を間近に眺めることができる公園。静かな海に並ぶ潜水艦の姿は圧巻で、初めて目にする光景に思わず足を止めてしまった。

公園内には、かつて魚雷を積載していた魚雷積載用クレーンも当時の姿のまま残されている。戦後は食糧などの物資を荷揚げするために使われていた。

近くの道路からは、建造中の巨大な造船の姿を望むこともできる。距離はあるものの、そのスケールは圧倒的で、思わず遠近感が狂ってしまうほど。呉という街が持つ「ものづくり」の迫力を、走りながら肌で感じられる。
想像を超えるスケール

呉駅の近くまで進むと、突如として現れる巨大な潜水艦。その正体は、海上自衛隊呉資料館(てつのくじら館) だ。実物の潜水艦がそのまま展示されており、初めて目にする全貌に思わず度肝を抜かれる。「これが海の中を動いてるの…?」と想像した瞬間、ロマンと同時にちょっとした恐怖も込み上げてきた。

潜水艦の向かいにある 大和ミュージアム の敷地には、戦艦 陸奥 に搭載されていた41センチ主砲身が展示されている。建造当時は世界最大級の艦載砲だったというから驚きだ。目の前に立つと、そのスケール感に言葉を失う。理屈抜きで、とにかくでかい。
呉駅でゴール

巨大建造物にテンションが上がりっぱなしのまま、ついにゴールの呉駅に到着。気づけばあたりはすっかり真っ暗だ。こうして無事に、かきしま海道サイクリングロードを走破。

呉駅から広島駅までは電車輪行で約45分。広島駅に到着後は、前泊したアパホテルへ戻り、冷えた身体をお風呂でしっかり温めてリフレッシュ。
海から鉄へ、表情が一変する瀬戸内ライド

夜は広島の街へ繰り出し、広島ならではの食を堪能しながら今回の旅を振り返る。

江田島では瀬戸内海の穏やかな景色をのんびり眺めながら走り、後半の呉では造船所を中心とした工業的な風景へと一気に表情が変わる。走るごとに景色が切り替わり、見どころが途切れないルートだった。広島を訪れる機会があれば、ぜひこの道も走ってみてほしい。
旅のしおり
| 14:10 | 東京駅出発 ※新幹線で前日移動 |
|---|---|
| 18:00 | 広島駅到着 ※前泊 |
| 7:00 | アパホテル広島駅前からスタート |
| 8:00 | 広島港宇品旅客ターミナル到着 |
| 8:30 | フェリー出航 |
| 9:10 | 切串港に到着 |
| 9:30 | 江田島ライドスタート |
| 11:30 | 喫茶のらでランチ |
| 14:00 | 濵口醤油店を見学 |
| 14:30 | Sugosでカフェ休憩 |
| 17:00 | 大和ミュージアムに到着 |
| 17:30 | 呉駅でゴール |
| 17:50 | 呉駅から広島駅へ電車輪行 |
| 18:50 | 広島駅に到着 |








