岡山・総社市 日帰りの旅

アバター画像 つっちー

岡山県の観光地と聞くと、倉敷や瀬戸内の風景を思い浮かべる人が多いかもしれない。今回はあえて、王道ルートから少し外れて岡山を走ってみることにした。

舞台は、桃太郎伝説が息づく吉備路エリア。平坦な道が続く「吉備路自転車道」を、小径車ブロンプトンでのんびり走りながら、古墳や史跡を巡り、最後は「パンの街」として知られる総社市を目指す日帰り旅。

距離は控えめ、寄り道は多め。走るというより、観光要素強めのライド。そんなブロンプトンで行く岡山日帰りの旅を、今回もディスカバーライドらしくレポートでお届けする。

※本記事は中国地方知事会サイクリング観光振興実行委員会の提供を受けています。

 

ブロンプトンで始まる旅

今回の相棒は、折り畳み小径車のブロンプトン。特殊な工具は不要で、誰でも簡単に折りたためるのが魅力だ。前方には専用バッグを装着でき、お土産やちょっとした荷物も気軽に収納できる。今回使用したのは、Cラインの外装4段変速モデル。

荷物もコンパクトで、東京駅までの電車輪行も、とにかく気楽だ。いつもなら他の乗客の邪魔にならないよう先頭車両を選ぶところだが、サイズが小さいので乗車車輛を気にする必要なし。

そのまま早朝の新幹線に乗り込み、岡山駅へ。東京駅から岡山駅まで約3時間。車窓からの景色を楽しみながらのんびり移動。気持ちにも自然と余裕が生まれる。

折り畳んだブロンプトンは、座席上の荷物棚にすっぽり収まるサイズ感。ロードバイクだと扉付近のスペースを探したり、周囲に気を遣ったりするが、その点ブロンプトンは驚くほどストレスフリー。

約3時間の新幹線移動を終えて岡山駅に到着。ライドに不要な荷物は駅のコインロッカーに預け、身軽になって準備完了。

ゆるっと楽しむ吉備路自転車道

準備を整えたところで、岡山駅名物・桃太郎の銅像の前でしっかり記念撮影。
いざ鬼退治、、、ではなく、パンわーるど・総社市へ!

と、その前に。走り出す前に、今回のルートをご紹介。
岡山県には、県内のサイクリングの魅力を発信するプロジェクト「ハレいろ・サイクリング OKAYAMA」があり、初心者から旅派まで楽しめる多彩なルートが整備されている。

岡山県がおすすめする8つのサイクリングルートの中から、今回選んだのは吉備路エリア。平坦で走りやすく、古代の歴史や物語に出会えるのが魅力だ。観光も走りも楽しめる“欲張り”なルートとして、「吉備路自転車道ルート」をのんびり走っていく。

自転車道の距離は約25kmと短めながら、吉備津神社の桃太郎伝説や造山古墳など、吉備の歴史スポットをなだらかな道でつないでいくルート。※RWG上では寄り道や徒歩も含んでいるため移動距離が40kmとなっています。

岡山駅からライドスタート

平日の午前中に岡山駅をスタート。通勤ラッシュもひと段落した時間帯だったこともあり、駅周辺は思ったほど交通量も多くなく、リラックスした中でのスタート。

岡山駅周辺では車道の一部を自転車道として走る区間が続くが、笹ヶ瀬川沿いに入ると車止めも設置され、雰囲気は一変。車を気にせず、のんびりと川沿いの景色を楽しみながら走れる心地よい区間となる。

ルート途中にある吉備津彦神社の駐車場の一角に桃太郎の像を発見。桃太郎のゆかりがある物かもしれないということで近くまで寄ってみることに。

近くで見ると、桃太郎の足元から動物たちがひょっこり登場。鬼退治に挑む勇敢な猿……かと思いきや、表情はかなりほっこり。凛々しさより愛嬌全開で思わず癒されてしまった。

桃太郎伝説の原点「吉備津神社」

けんたさんが気になっていた、桃太郎ゆかりの吉備津神社に立ち寄る。駐車場にはバイクスタンドも設置されていて、サイクリストウェルカムな雰囲気がうれしい立ち寄りスポットだ。

吉備津神社は、桃太郎伝説のルーツを感じさせる圧倒的な荘厳さが魅力。参道の階段に足を踏み入れた瞬間、空気がすっと変わるのがわかる。写真では伝わりきらないが、実際に一段一段のぼってみると、その重厚さと静かな迫力がじわりと伝わってくる。

本殿と拝殿は、全国唯一の「吉備津造り」ともいわれる「比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)」という特別な建築様式。屋根が重なり合う姿はとても優雅で、どこか古代の宮殿を思わせる。現在は吉備津神社の象徴として国宝にも指定されている。

吉備津神社の最大の見どころは、本殿から一直線に伸びる美しい回廊。全長およそ400メートルにも及ぶその廻廊を歩いていると、自然と背筋が伸び、空気がすっと引き締まる。

最後に、桃太郎のモデルとされる大吉備津彦命が、鬼・温羅(うら)を射た矢を置いたと伝わる巨岩「矢置岩」を目にして、吉備津神社を後にする。伝説の舞台を今に伝える、神話と歴史が静かに交差する象徴的な場所だった。

畑の中に現れる巨大古墳

桃太郎伝説に触れられて、気持ち的に満足。次なる目的地は、日本最大級の前方後円墳として知られる造山古墳(つくりやまこふん)だ。平坦な畑の脇を縫うように続く自転車道を、のんびりと進んでいく。

しばらく走ると、畑の脇に「ちょっとした丘かな?」と思える盛り上がりが見えてくる。近づいてみると、その正体は日本最大級の前方後円墳、造山古墳だった。

この吉備エリアには古墳が数多く点在している。「なぜ、こんなにも古墳が多いのか?」という素朴な疑問を解くべく、造山古墳ビジターセンターへ立ち寄ることにした。

古墳の謎を知るビジターセンターへ

造山古墳のすぐ隣に建つのが、古墳の情報発信拠点となる 造山古墳ビジターセンター。2020年4月にオープンした新しい施設で、造山古墳や吉備エリアの歴史を分かりやすく学べる。

館内では、この地域で栄えた古代吉備国を紹介するパネル展示が充実。歴史をパネルや映像で紹介している。

造山古墳 は、5世紀ごろに築かれた古代吉備の大首長の墓とされ、九州から運ばれた石材が使われている点からも、その圧倒的な権力の大きさがうかがえる。

ビジターセンターで予習したあとは、いよいよ実地編。建物のすぐ裏手から徒歩で古墳の上へとのぼれる。人生初の“古墳登頂”に、思わず気分はこーふん(興奮)。歴史の上に立っている感覚が、じわじわと楽しい。

『造山古墳』は規模では全国4位ながら、墳丘に実際に上がれる古墳としては日本最大。日本の古墳の原点ともいわれる代表的な前方後円墳だ。この圧倒的なスケールの建造物を、すべて人の手だけで築き上げたと想像すると、思わず感慨に浸ってしまう。

古墳の次は五重塔

造山古墳で古代の歴史に触れたあとは、もうひとつの歴史スポット「備中国分寺」へ。自転車道を走っていると、のどかな田園風景の中に、ふいに五重塔が姿を現す。

備中国分寺跡は、聖武天皇が天平13年(741)に、仏教の力で天災や飢饉から国と人々を守る「鎮護国家」を願って建立した官寺のひとつ。吉備の地に残る、祈りの歴史を感じられる場所だ。

自転車道を走っていると、この吉備エリアが見渡す限りの平地であることに気づく。古墳や五重塔といった巨大建造物を築くには、作業のしやすさに加え、周囲を遮るものがないこの地形は最適だったのだろう。走りながら、建造物をより大きく見せるための場所選びだったのでは、と想像が膨らんだ。

旬が売りの「旬感広場」でランチ

道中にあるJAの施設「旬感広場(しゅんかんひろば)」に、少し遅めのランチで立ち寄る。
建物の1階には農畜産物直売所「晴れのち晴れ」、2階にはカフェレストラン「SORA&SUN」が入っており、地元の食の魅力を楽しめるスポット。

2階のカフェ「SORA&SUN」では、ランチタイムに地元野菜を使ったバイキングも行われており、かなり惹かれたのだが、今回は到着が遅く残念ながらランチタイムには間に合わず。

カフェタイムでも軽食が注文できたので、地元野菜を使ったクラブハウスサンドとミックスベリーデニッシュをチョイス。どちらもパンはもちもちで、野菜もフルーツも驚くほど新鮮。

食後は1階の農畜産物直売所へ。並ぶ野菜はどれも色艶がよく、思わずテンションが上がってしまう。さすがに野菜は持ち帰れないが、代わりに日持ちするベーグルなどをお土産にセレクト。

革と出会う、ポンテへ寄り道

お腹を満たしたあとは、「旬感広場」の近くにある革製品専門店「ポンテ」へ。2階建て住居の1階部分が工房兼ショップになっているおしゃれな建物。

今回、私(ツッチー)が立ち寄ってみたかったお店。店内に一歩入ると、ふわっと広がる革の香りに思わず深呼吸。空間いっぱいにオリジナルの革製品が並び、あれこれ眺めているだけでテンションがじわじわ上がってくる。

どれもシンプルで飽きのこないデザインが魅力。丁寧な作り込みにもかかわらず価格は良心的で、「これはいい…」と静かに唸ってしまうクオリティだ。

旅の思い出に、小銭入れをセミオーダー。革の色やファスナーの種類を選ぶ時間も楽しく、完成後は自宅まで配送してくれるとのこと。納品までは約1カ月。待つ時間さえ、旅の余韻として楽しめそうだ。

ゆっくり眺めるタンチョウの里

買い物のあとに立ち寄ったのが「きびじつるの里」。実は岡山県は全国一のタンチョウ飼育県。ここでは保護・飼育や繁殖が積極的に行われている。間近で優雅な姿を眺められる、静かで貴重なスポットだ。

ここではタンチョウを間近で見学したり、エサやり体験ができる施設だが、今回は鳥インフルエンザの影響で制限中。残念ながら近くでは見られず、少し距離をとっての見学となった。

パン愛あふれる総社市へ

日も傾いてきたところで、ゴールとなるパンの街・総社市へラストスパート。実は岡山県の県庁所在地である岡山市は、1世帯あたりのパン消費量が全国トップクラスとも言われている。

そんな岡山県の中でも、総社市はパンの製造出荷額が県内トップクラス。“パンわーるど総社市”として街を挙げてパンを推している。数ある名店の中でも外せない老舗が、地元で絶大な人気を誇る トングウ。

店内には、昔ながらのコッペパンやうぐいすパンがずらり。到着したのは夕方だったため、すでに棚はほぼ売り切れ状態。それでも運よく残っていた中から、人気のパンをいくつか確保できた。

こちらは、トングウの人気No.2「バターロール」。驚くほど手に取りやすい価格も魅力だ。コンテナにざっくり並べて販売するスタイルは、今となっては少し懐かしく、逆に新鮮。

トングウでしっかりパンを買い込んだものの、総社駅発の電車まではまだ少し時間がある。「せっかくなら、もう一軒いけるのでは?」と欲が出て、周辺のパン屋を探してみることに。

調べてみると、総社駅から自転車で約10分の場所に、クリームパン専門店「エビスパン」を発見。

店内に入ると、そこはクリームパン天国。王道のカスタードはもちろん、生姜クリームパンやバナナクリームパンといった個性派までずらりと並ぶ。

どれも150円前後という、お財布にやさしすぎる価格設定。気づけばトレーの上はクリームパンでいっぱいに。ちなみにエビスパンは「朝はやくないパン屋」を名乗るだけあり、営業時間は9:30〜19:00。夕方でも駆け込める、パン好きの心強い味方だ。

名残惜しさを残して東京へ

総社で家族へのお土産パンもしっかり大量確保できて大満足。あとは袋いっぱいのパンを大事に抱えつつ、総社駅から電車輪行で岡山駅へと移動する。

岡山駅に到着後、コインロッカーで預けていた荷物をピックアップし、新幹線で東京駅へ。
本音を言えば一泊して夜の岡山市を散策したかったところだが、今回はスケジュールの都合でやむなく帰路へ。それでも、しっかり密度の濃い一日を走り切った満足感は十分だった。

新幹線では、総社で仕入れたパンを夕食代わりに半分ずつシェアしながら東京へ。

トングウのパンは、噛むほどに懐かしさが広がる昔ながらの味わい。エビスパンのクリームパンは、手作り感あふれるやさしい生地と素朴で濃すぎないクリームが絶妙で、「これは正解だったな」とうなずきながらの車内ディナーとなった。

短くてもしっかり楽しい

今回は観光要素をしっかり楽しむ、少し“濃いめ”のライドとなった。距離は短めながら、立ち寄りや発見が多く、満足度はかなり高い一日。ブロンプトンのおかげで電車輪行のハードルも下がり、移動の自由度が広がったのも大きな収穫だった。

岡山には吉備路以外にも魅力的な自転車道が多く、まだ知らない岡山の奥深さに興味が湧いてきた。季節を変えて、また走りに来たい。

旅のしおり

6:50 新幹線で東京駅を出発
10:15 岡山駅到着 ※電車輪行
10:40 岡山駅前からスタート
12:30 吉備津神社を見学
13:30 造山古墳を見学
14:15 備中国分寺を見学
14:45 旬感広場でランチ
16:00 革製品専門店「ポンテ」で買い物
14:30 きびじつるの里に立ち寄り
17:00 ベーカリー「トングウ」で買い物
17:0 「エビスパン」で買い物
17:50 総社駅でゴール
18:00 電車輪行で移動(総社駅→岡山駅)
18:50 新幹線で広島を出発
22:15 東京駅に到着

今回立ち寄った場所

吉備津神社

造山古墳ビジターセンター

造山古墳

備中国分寺

旬感広場

ポンテ

きびじつるの里

トングウ

エビスパン

ライドコースを見る

ROUTE

「岡山の日帰り旅」のルートについて

岡山駅をスタートし、吉備路自転車道を走って総社駅を目指すルート。吉備エリアは平野が広がり、全体的にほぼフラットで走りやすいのが特徴だ。全長約25kmの吉備路自転車道は「日本の道100選」にも選ばれており、景色と走りやすさを兼ね備えた観光サイクリングにぴったりのルート。