2025/06/12
旅の最後に寄りたい!台中「自転車文化探索館」で体感する自転車の世界
台湾・日月潭の3泊4日のサイクリング旅の締めくくりに訪れたのは、台中市内にある「自転車文化探索館(CYCLING CULTURE MUSEUM)」。世界的自転車ブランド・GIANT(ジャイアント)が手がけるこの施設は、台湾における自転車の歴史や技術、暮らしや観光との関わりなどを多角的に紹介するユニークなミュージアムだ。
施設の目的は、見学者が自転車のことをより身近に感じ、わかりやすく理解してもらえる“場所”をつくること。館内には、自転車の進化や仕組みを学べる展示に加え、アート作品や映像コンテンツもあり、自転車愛好家はもちろん、誰もが楽しめる内容となっている。帰国前のひととき、旅の余韻に浸りながらその魅力をたっぷり堪能した。ぜひ本レポートをご覧ください。
潜入!未来型ミュージアム「自転車文化探索館」
こちらが「自転車文化探索館」の外観。
未来的な曲線デザインが印象的な建物は、台湾を代表する自転車ブランド・GIANTが手がけたもの。銀色の外壁が陽光を反射し、スタイリッシュかつ洗練された佇まいを放っている。GIANT本社の隣に位置し、2020年7月に開館。オープンから数年が経った今もなお、台湾の自転車文化を国内外に発信し続ける拠点として注目を集めている。
館内の入口には「CYCLING CULTURE MUSEUM」のサインが掲げられ、サイクリストと鳥のイラストが描かれたガラスが来館者を出迎える。開館時間は毎日9:00〜17:00(水曜休館)で、入館は一般NTD400(2025年5月時点)。英語・中国語の案内も整備され、誰もが気軽に立ち寄れる雰囲気だ。
<入館料の詳細等はこちら>
館内には「序」「歴史」「科学」「競技(ロードバイク)」「登山(MTB)」「個人」「環境」「未来」の8つの展示ホールが設けられており、自転車の成り立ちから最先端技術、サイクルライフの広がりまで、幅広いテーマを楽しむことができる。サイクリストはもちろん、初心者やファミリーにもおすすめの内容だ。
案内してくれたのはスタッフのSherryさん。明るく親しみやすい雰囲気で、丁寧な日本語の解説がとてもわかりやすく、初めての来館でも安心して楽しめたのが印象的だった。
※実際の館内ガイドスタッフは英語か中国語のみとなりますが、日本語の音声ガイド装置の貸し出しは行っています。
館内に足を踏み入れた瞬間、まず目に飛び込んでくるのは、天井まで吹き抜けた広々としたエントランス。やわらかな曲線を描く建築デザインが印象的で、まるで自転車で風を切るような心地よさを感じさせてくれる。壁一面に差し込む大きな窓からは自然光がたっぷりと入り、館内をやさしく包み込むような明るさに。これから始まる“自転車の旅”への期待が一気に高まる、そんな印象的なエントランスだ。
なんとエントランスの壁には、けんたさん一行に特別なウェルカムメッセージが映し出されていた。自分たちの名前が表示されるなんて感激!自転車文化探索館の心づかいに、旅の最後にあたたかいサプライズをもらった気分だ。
展示コーナーの最初に登場するのは「歴史」ゾーン。自転車の起源を紹介するこのエリアでは、なんと250年以上前のモデルも含めた貴重な展示が並び、その進化の過程を間近に体感できる。ペダルの位置やフレーム構造など、時代ごとの設計の違いに驚かされる。
展示の中には、GIANTの自転車の進化も丁寧に紹介されている。創業初期のモデルから最新のロードバイクまでが並び、台湾が世界有数の自転車大国へと成長した歩みを実感できる貴重なエリアだ。
こちらのバイクは、GIANTが1995年に発表したカーボンモノコックモデル「MCR」。空力性能を追求した先鋭的なデザインで、カーボン技術の礎を築いた一台だ。TCRの直接的な原型ではないが、TCR誕生の土台となる技術と思想が詰まっている。後の“世界標準”へとつながる重要なマイルストーンだ。
写真左に展示されているのは、GIANTが展開する女性専用ブランド「Liv(リヴ)」のトライアスロンバイク。2015年モデルのこの一台は、女性の体格や筋力に最適化された設計が特徴で、デザイン性と性能を両立。Livは単なる“女性向け”ではなく、女性のためにゼロから設計された本格ブランドとして、多くのサイクリストに支持されている。女性ライダーの可能性を広げる象徴的な存在だ。
「科学技術」ゾーンは、自転車の構造や素材を実際に触れて学べる体験型展示。カーボン、アルミ、チタンなど各素材の違いが視覚的に比較でき、力の伝わり方や軽さも実感できる。技術の裏にある工夫と進化を知ることができ、自転車の奥深さに改めて気づかされる。
こちらは「ギア比」の仕組みを体験できる展示。実際にクランクを回しながら、ギアの軽さや重さの違いを体感でき、画面には回転数やスピードがリアルタイムで表示される。感覚的に理解できるので、子どもから大人まで楽しめる知的アトラクションだ。
こちらは「回転による慣性」を体感できるユニークな展示。ホイールを回しながら姿勢を変えると、体ごと動き出す不思議な感覚に驚かされる。ジャイロ効果を身体で理解できる貴重な体験で、科学と自転車のつながりを楽しく学べる。
迫力満点の「競技・ロードバイク」ゾーンは、GIANTが実際にサポートしたプロチームのバイクがずらりと並び、レースシーンの演出とともに臨場感を演出。VRやシミュレーター体験もあり、観るだけでなく“体験する”展示としても魅力。レース好きならずとも熱くなれるエリアだ。
なんとプロロードレースチームのチームバス内部を再現したシート体験コーナーも。普段は選手しか座れない空間に腰掛けられるのは貴重な体験。車窓風の演出とあいまって、まるでツール・ド・フランスに帯同しているような気分になれる。ファン必見の珍しい展示だ。
「登山・マウンテンバイク」ゾーンでは、クロスカントリーやトレイル、エンデューロなどMTBの多彩なスタイルを紹介。
こちらは、森の中を駆け抜けるような臨場感が味わえるMTBシミュレーター体験。実車にまたがり、前方のスクリーンに映し出されるリアルな山道映像とともに、ハンドル操作や路面の揺れを模擬的に体感できる。
グリーンバックの特設スタジオでは、MTBにまたがって7種類のライディングポーズを連続撮影。迫力満点の走行シーンに合成され、自分がまるでプロライダーになったような写真が完成する。旅の思い出にぴったりのユニークな体験で、SNS映えも抜群。家族や仲間と盛り上がれる人気の撮影スポット。
けんたさんが撮った写真はこんな感じ。まるでMTBでジャンプ中の連続写真!
「個人」ゾーンでは、自分の体格や柔軟性に応じた最適な自転車サイズを知る体験ができる。身長や脚の長さ、前屈の柔軟度を測りながら、ぴったりのジオメトリーを学べる内容は、自転車初心者にも嬉しい実践的な展示だ。
E-Bikeコーナーでは、電動アシストの仕組みや構造をビジュアルで解説。実車展示とともに、パワーの伝わり方や航続距離、アシスト制御の違いも体験的に学べる。都市型からオフロードまで、用途に応じた多様なE-Bikeの進化を実感できる内容になっている。
「環境・シティバイク」ゾーンでは、台湾全土で活躍する公共シェアバイク「YouBike」を中心に、自転車が都市交通や暮らしにどう貢献しているかを紹介。
こちらの信号機は、目の前に立つと自分のポーズを真似してくれるユニークなギミック。子どもたちが楽しみながら信号機に興味を持てるよう工夫されており、安全教育と遊び心が見事に融合している。思わず大人もポーズを決めたくなる、注目の体験型展示だ。
こちらは車と自転車の“安全な車間距離”を体感できる展示。自分が動くと、その距離がリアルタイムで車のリアガラスに数値で表示される仕組みで、視覚的に距離感を学べる。普段の運転や走行時に意識しにくい安全距離を、遊びながら自然に理解できる。
巨大なスクリーンに映し出される映像体験は圧巻。足元にも映像が広がり、風まで吹いてくる演出に思わず没入。GIANTの自転車が走るシーンの数々に胸が高まり、見終わるころには「走り出したい!」という衝動が湧いてくる。まさに五感で楽しむサイクルシアターだ。
「Buffalo Bicycle Project」の展示では、アフリカなどの発展途上地域で活用されている頑丈なバイク「バッファローバイク」が紹介されている。悪路でも壊れにくく、通学・医療・物流などあらゆる場面で生活を支えるこの自転車は、まさに“命を運ぶ乗り物”。荷物を積んだ実車展示に加え、現地の暮らしと活用の様子が映像やパネルで伝えられており、その社会的インパクトを実感できる。自転車が世界を変える力を持っていることを教えてくれる感動の展示だ。
展示されている「バッファローバイク」で注目すべきは2重構造のチェーン。漕ぎ出し時は内側、加速すると外側にトルクがかかる設計で、現地での修理も簡単。過酷な環境下でも対応できるよう、メンテナンス性とコスト面まで考慮された仕組みに感動する。シンプルながらも現地の声に寄り添った工夫が詰まった1台だ。
世界の自転車都市を紹介するこの展示では、アムステルダム、コペンハーゲン、ポートランド、東京などが登場。それぞれの都市がどのように自転車を街づくりに取り入れているかが、映像や立体模型でわかりやすく紹介されている。未来の都市像を考えるうえでヒントが詰まったコーナーだ。
東京の紹介では、JFEエンジニアリングが手がけた地中型駐輪場を紹介。限られた都市空間を有効活用しながら、美観や安全性も両立した画期的な仕組みだ。
館内を歩いていると、壁に大きく描かれた「X」マーク」を発見。
よく見ると、GIANTのカーボンフレームを構成する270種のパーツ型が並べられたもの。高精度・軽量な設計を象徴する展示で、技術の結晶を“視覚で味わう”おもしろさがある。自転車好きにはたまらない一角だ。
最後は、開放感あふれる3階のアートスペースへ。白い壁面には色とりどりのアート作品が整然と並び、上部のスリット窓から注ぐ自然光がやわらかく全体を包み込む。静かな余韻に浸れる癒しの空間だ。
3階のイベントホールでは、台湾を自転車で旅する魅力を伝える特設展示が展開中。#RideOnや#DreamHubといったキーワードのもと、美しい風景を走るライダーの映像や展示が並び、“走りたくなる気持ち”を呼び起こす内容になっていた。
GIANTの自転車がどのように作られているのかを、実際の工程映像とブロック模型で紹介する「How It’s Made」コーナー。細部まで再現されたブロックの世界は見ていて楽しく、つい夢中になってしまう。
黄色いボックスに「look inside」と書かれた小さな穴を覗き込むと、、、、
そこには精巧に作られたミニチュアの世界が。ギアの上を走るサイクリストたちの姿が広がり、まるで未来の旅の風景をのぞき見ているかのような感覚に。遊び心と技術が詰まった印象的な仕掛けだ。
一通りの見学を終えて、イベントホールに併設されているカフェ「Tour de Café」でほっと一息。木の温もりと緑に包まれた空間で、けんたさん一行もアイスカフェラテを堪能。まろやかな味わいで、疲れた体に心地よいご褒美タイムとなった。
ちなみに、館内のショップでは、サイクリスト心をくすぐるオリジナルグッズが充実。自転車モチーフのラゲッジタグや、ユニークなイラスト入りTシャツなど、デザイン性も高く、旅の思い出やプレゼントにぴったり。
「I LOVE BICYCLE」のイラストがたまらなくキュートのTシャツも。袖のロゴタグもおしゃれで、サイクリスト心をくすぐる1枚。
大人も子どもも夢中になる!五感で楽しむ展示空間
見学を終えて感じたのは、「自転車文化探索館」がまさに“自転車のすべて”を楽しめる体験型ミュージアムだということ。歴史、科学、スポーツ、環境、生活といった多彩な切り口で、自転車の魅力を分かりやすく紹介しており、大人も子どもも夢中になります。ギア比や慣性を体感できる科学展示、山道を走るシミュレーター、カーボンフレームの構造を学べる展示など、思わず「へぇ!」と声が出る仕掛けが満載。美しい建築空間の中には、アート展示、カフェ、ショップも併設されていて、一日いても飽きません。自転車好きはもちろん、台中観光の合間にもぜひ訪れてほしい、学びと驚きにあふれたスポットです。