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2025/10/10

釜山の海と街を走る!韓国初の都市型ファンライド「Seven Bridges Tour」体験レポート

はじめての韓国ファンライドイベントへ

「韓国の釜山(プサン)で初開催のサイクリングイベントがあるんだけど、参加してみない?」

そのひと言が、今回の旅のはじまりだった。
韓国観光公社福岡支社からの招待を受け、初めての韓国ライドに挑戦!
海と街を舞台に走る、新しいスタイルのファンライドイベント。それが「セブンブリッジツアー」だ。

その名の通り、釜山には7つの橋があり、海と街をつなぐ象徴として知られている。このイベントでは、実際にすべての橋を渡るわけではないが、“橋の街・釜山”を舞台に、海と都市の風景を体で感じることができるファンライドイベントだ。
都市のスカイラインと海風が交わる中を走る。そんな釜山ならではのダイナミックな景色が、このイベントの大きな魅力になっている。

けんたさんも、私(つっちー)も韓国は初めて。「橋を走るツアー?」「海の上を走るってどんな感じなんだろう?」――そんなワクワクが止まらず、即決で参加を決めた。
“初めての韓国ファンライド”がどんな景色を見せてくれるのか。 未知の楽しさを胸に、釜山へ向けて出発した。

日本から一番近い“海外の海”・釜山とは

釜山は韓国第2の都市であり、ソウルに次ぐ経済・観光の拠点。そして日本から最も近い“海外サイクリングエリア”でもある。

東京・羽田からは飛行機で約2時間半。 福岡からはわずか1時間ほど。さらに、博多港からはカーフェリー「ニューかめりあ号」が運航しており、約6時間で釜山港国際旅客ターミナルに到着できる。
飛行機でも船でもアクセスできるこの手軽さは、海外ファンライドのハードルをぐっと下げてくれる。

釜山の魅力は、なんといっても“海と都市が隣り合う”独特の風景。海雲台(ヘウンデ)や広安里(クァンアンリ)といった人気ビーチでは、砂浜のすぐ後ろに高層ビル群が立ち並び、リゾートと都市が一体化した壮観な景観を楽しめる。

そしてその海と街をつなぐのが、釜山を象徴する数々の“橋”。 セブンブリッジツアーは、そんな釜山の橋を「走って渡る」ことで体感できる、海と都市を舞台にした新しいファンライドイベントだ。

イベント当日の朝 ― BEXCO(ベクスコ)で受付

会場は釜山市内にある大型展示施設「BEXCO(ベクスコ)」。国際会議や展示会、コンサートなど年間を通して多彩なイベントが開催され、釜山のビジネスと文化の発信拠点として知られている。

当日の朝5時、まだ暗いなか会場に到着。ぞろぞろとサイクリストが集まってくる。

「ゼッケン受け取りはどこだろう?」と少し迷いながら、他の参加者に続いて建物の中へ。驚いたのは、自転車イベントでは珍しく“展示ホール内”にそのまま自転車を持ち込めるスタイル。

今回の参加者はなんと約3,000名。 会場は人と自転車で埋め尽くされ、記念すべき第1回大会の熱気が漂う。エントリー開始からわずか1分で完売したという人気ぶりもうなずける。

ゼッケンブースで無事に受け取りを済ませると、周囲には自転車メーカーやアパレルブランドのブースが並び、日本のライドイベントとよく似た雰囲気だ。

ゼッケンはヘルメット用ステッカーとシートポスト装着タグの2種類。コース上にはタイムアタック区間が設けられており、このタグで自動計測される。

ゼッケンを装着し終えると、会場の熱気でテンションも上がってくる。 韓国のサイクリストたちがどんな雰囲気なのか、興味津々で周囲を観察していると、いよいよスタート準備が始まった。

スタート地点はBEXCOから約1km先の「広安大橋」の上。スタッフの案内に従い、ゆっくりと展示ホールを出発。会場を出た地点からすでに道路が封鎖されており、安心して走れるのがうれしい。

広安大橋で迎えるスタートセレモニー

橋へと続く道の両側にそびえるビル群、頭上には抜けるような青空。まるで都市の空を走っているようで、「うわ、これ最高!」と自然に声がこぼれる。

中で台湾の自転車インフルエンサー・リンダさんと遭遇。 PRのために招待参加しているとのことで、国を超えてサイクリストが集うこのイベントの規模を改めて実感。

「広安大橋」の上では、音楽と歓声に包まれたスタートセレモニーが進行中。普段は車がびゅんびゅん走る大動脈が、この日だけはサイクリストのための特別なステージに!釜山の街を丸ごと貸し切ったような開放感に思わずワクワクが止まらない。

사진 윤민호

幅4車線の橋の上にずらりと並ぶ3,000人のライダーたち。朝日に照らされた海と街を背に、音楽と歓声でボルテージは最高潮。花火が打ち上がった瞬間、待ちきれないように一斉にペダルを踏み込み、スタートラインから飛び出していった。

ウェーブスタートではないものの、道幅が広く安心して走り出せる。海風を受けながら橋の上を駆け抜けると、視界いっぱいに広がる青と光。まるで別世界に飛び込んだような高揚感が全身を包んだ。

釜山を駆け抜ける ― 海、橋、そして街へ

今回のコースは約70km、獲得標高は500mほど。都市内を走るルートのため峠のような急勾配はなく、緩やかで走りやすい。

スタート直後は橋を一気に下り、広い車線を流れるように進む。 時折50km/hを超えるスピードが出る下り区間もあり、自然とアドレナリンが高まる。

交通規制が徹底され、道路には関係者車輛以外の車が一切ない。 街そのものがライドコースになるこの非日常感にとても興奮する。スタート直後は一気に橋を下るセクションへ。道幅が広いため走りやすいが、参加者のスピードは想像以上。下りでは時速50kmを超える場面も。後方から次々とライダーが追い抜いていくなか、けんたさんも無理をせず、右側通行に慣れながら慎重にペースを守って進んでいく。

コースの途中にはいくつかトンネル区間が登場。明るい照明が続く直線の先に光が伸び、まるで未来へ突き抜けていくような感覚に包まれる。風の抵抗が少なくスピードも乗り、ペダルを踏むたびに加速する高揚感がたまらない。

橋の上は本来なら車しか走れない高速道路区間。その途中で現れる料金所を自転車で通過するという、なんとも不思議で新鮮な体験。

エイドステーションでひと休み

今回のイベントでは、コース上に2カ所のエイドステーションが設けられている。スタートから約35km地点の最初のエイドに到着すると、すでに多くのライダーでごった返していた。それでもフードもドリンクも十分に用意されており、慌てる必要はない。自転車を降りて列に並びながら、テーブルいっぱいに並んだ補給食を眺める時間もまた楽しい。

エイドステーションでは、バナナの他に素朴な味わいのドーナツが配られていた。ひと口目は控えめな甘さだが、噛むほどにやさしい甘みが広がる。疲れた体にちょうどいい甘さで、思わずもう一つ手を伸ばしたくなる味だった。

珍しかったのが「ゆで卵」。日本のイベントではあまり見かけないが、タンパク質をしっかり補給できるのがうれしい。韓国ならでは?のチョイスに、思わず笑顔になるエイドメニューだった。

スタートからぶっ通しで走ってきたこともあり、ここでしっかり補給。バナナやドーナツを頬張りながら、ひと息つくこの時間がなんとも幸せ。走りの緊張がふっとほどけていく。

メカニックブースでは、変速の調子を現地スタッフにチェックしてもらう。英語も韓国語も完璧じゃなくても大丈夫。ジェスチャーと笑顔で伝わる“サイクリスト共通語”が、なんとも心地いい。

高速道路を走る非日常 ― タイムアタック区間へ

第一エイドでの補給を終え、街中の中央車線寄りを駆け抜ける。道路の要所には警察官や立哨員が配置され、コースの安全をしっかりと管理。時間が経つにつれて車の渋滞も見えてきて、改めて“この特別な空間を走っている”という実感が湧いてくる。

橋を登る途中、「START」と書かれたフラッグが見えてきた。ここからはいよいよタイムアタック区間の始まり。思った以上に脚を使っていたこともあり、けんたさんは焦らず、一定のリズムでペダルを踏み続ける。

スタートから約55km地点にある2つ目のエイドステーションは、高速道路の料金所前に設置されていた。1つ目のエイドに比べてライダーの数も分散しており、ゆったりと補給を楽しめる雰囲気。ここでもスタッフが笑顔で声をかけてくれ、安心感に包まれる。

2つ目のエイドでは、韓国らしい補給食「練り物スティック(日本のはんぺん風)」が登場。優しい味わいでエネルギー補給にはぴったりだ。足切りの時間も迫っていたため、自転車を脇に立てかけて、手早くパクッとひと口。

エイドでしっかり補給を済ませ、いよいよ再スタート。残りおよそ20km。遠くにスタート地点で見た高層ビル群が姿を現し、ゴールが近いことを感じさせる。海風を受けながら、最後の橋を目指してペダルを踏み込む。

空の下、笑顔でフィニッシュ!

スタートから約3時間半。 午前10時30分、再び「広安大橋」に戻り、フィニッシュゲートを通過!

フィニッシュエリアではブラスバンドの生演奏が響き渡り、ライダーたちを笑顔で祝福。音楽と歓声に包まれた最高のゴールシーンとなった。

途中のエイド休憩を含めても、かなりのハイペース。 橋の上は完走したライダーたちで賑わい、互いに完走メダルを掲げながら笑顔で記念撮影を楽しんでいる。 普段は絶対に自転車で走れない橋の上だからこそ、喜びもひとしおだ。

フィニッシュ後は、再びBEXCOまでクールダウンを兼ねてライド。 交通規制が続く広い道路をゆっくり走りながら、海と街が溶け合う釜山の絶景を眺める。青空の下、風を感じながら走るその時間は、まるでご褒美のようだった。
“ゴールして終わり”ではなく、“走りながら味わう余韻”。セブンブリッジツアーの魅力は、最後の瞬間まで続いていた。

フィニッシュ後のご褒美は、冷麺とヤンニョムチキン

広安大橋から1kmほど走り、朝の集合場所・BEXCOに戻ると、会場では冷麺やヤンニョムチキンが振る舞われていた。

写真左の透明カップには、冷たいスープが染みわたる冷麺。紙コップには、甘辛いタレが絶妙なヤンニョムチキン。

疲れた体に染みわたる冷麺のスープ。けんたさんも無言で箸を進め、あっという間に完食。走り切ったあとの一杯に、韓国フードの底力を感じた。

海を越えてつながるサイクリストの未来

はじめての韓国ライドが、まさかの“完全道路封鎖”イベントになるとは思わなかった。交通規制が徹底されたコースは安心感があり、韓国特有の右側通行でもストレスなく走れる。参加者のレベルも高く、終始スピード感に満ちた爽快なライドだった。

そして何より印象的だったのは、普段は車しか通れない巨大な橋を自転車で走り、釜山の街を上から見下ろすあの非日常感。セブンブリッジツアーは、“海と都市が共鳴する釜山”を全身で感じられる、新しいスタイルのファンライドイベントだった。

日本ではまだ味わえないスケールと演出に、ただ圧倒された。道路を封鎖して街全体をライドコースに変えてしまう――そんな大胆さと熱気に、韓国のエネルギーを感じた。日本のサイクリストにも、ぜひ一度この「釜山ライド」を体験してほしい。海の向こうには、きっと新しい自転車の楽しみ方が待っている。
日本と韓国が自転車でつながる――そんな未来を感じさせるイベントだった。
もし第2回が開催されるなら、次は博多からフェリーに乗って、海を渡って参加してみるのもありかも。

写真提供:@busan7bridges

イベント公式サイト(English)はこちら

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