山陰地方1泊2日の旅 DAY2

山陰地方1泊2日の旅、2日目の舞台は島根県。
島根県にも魅力的なサイクリングロードは数多く紹介(しまねサイクリングNavi)されているが、今回は米子鬼太郎空港を起点に走れる中海周遊サイクリングコースをセレクト。
中海(なかうみ)は、鳥取県と島根県にまたがる穏やかな汽水湖。その湖畔をぐるりと巡る中海周遊サイクリングコースは、フラット基調で走りやすく、視界の開けた心地いいルートが続くのが特徴だ。中海を反時計回りに走りながら、途中で松江市に立ち寄って城下町観光も見学。さらに中海の中心に浮かぶ大根島を経由し、夕暮れの景色を味わいながら米子鬼太郎空港へ。その日のうちに飛行機輪行で羽田へ戻る、見どころ満載の一日が始まる。
※本記事は中国地方知事会サイクリング観光振興実行委員会の提供を受けています。
倉吉駅で輪行準備、2日目スタート

2日目の朝は、宿泊先の「望湖楼」から自走で特急停車駅の倉吉駅へ。駅構内にある自転車組み立てスペースで輪行準備を行う。寒さをしのぎながら落ち着いて作業ができるのは、冬の旅にはとてもありがたい。

倉吉駅から米子駅までは、山陰本線の特急列車を利用して移動。所要時間は約30分ほどで、昨日走った鳥取うみなみロード沿いを、今度は鉄道で戻るかたちとなる。

前日の雪の影響で、電車は約40分遅れで到着。2両編成と短いため、自転車をどこに置けるのか少しドキドキしながらホームで待つ。

不安とは裏腹に、車両の一部には広めの荷物スペースがあり、自転車2台がすっぽり収まった。通路を塞ぐことなく輪行できるため、周囲に過度に気を遣う必要もなく、サイクリストとしてはとても気持ちが楽だ。
米子駅から、島根ライド再スタート

暖房の効いた車内で揺られること約30分、米子駅に到着。駅前で自転車を組み立て、ライドの準備を整える。中海周遊サイクリングコースを基本に、中海を反時計回りで巡る約70kmの行程だ。小雨は残るものの、前日の強風は収まり、天気は回復に向かっていた。

まずは腹ごしらえから。早めのランチスポットを探しつつ、米子駅を出発し松江方面へペダルを進める。走りながら次の立ち寄り先を考える時間も、自転車旅ならではの楽しみだ。
地元で愛される肉料理の名店へ

走り始めて約30分で到着したのは、ステーキ&ハンバーグの専門店「舶来屋」。地元客にも観光客にも愛される、安来を代表する人気店だ。

本日のおすすめメニュー「鉄板ライス」を注文。熱々の鉄板の上に、ライスとスライスされたビーフ、コーンがたっぷりとのり、香ばしい音と香りが食欲を一気に刺激する。

カリカリ系を想像していたが、いい意味で裏切られる柔らかさ。牛肉にガーリックの風味がしっかり絡み、ご飯が止まらない味わいだ。ボリュームも十分で、これからのライドに向けてしっかりとエネルギーを補給できる一皿だった。
中海をなぞる、静かな湖畔ライド

お腹を満たしたあとは、中海の南側をなぞるように松江市へ向かって走る。中海は鳥取県と島根県にまたがる汽水湖で、海と川が混ざり合う穏やかな水辺が特徴。広がる湖面を眺めながら、静かな景色の中を気持ちよくペダルを進めていく。

中海周遊サイクリングロードを離れ、山陰本線沿いの道を走って松江市の中心部へと向かう。
久しぶりのお城に戸惑う

松江市の中心にある松江城に到着。いざ写真を撮ろうとするものの、どこから撮るのが正解かわからず、気づけば城の周辺をぐるぐると彷徨うことに。時間があれば、お堀をゆったり巡る遊覧船にも乗ってみたかった。

敷地内に無料の駐輪場があると知り、近くまで足を運んでみる。現存天守の迫力もさることながら、そびえ立つ石垣の高さに思わず息をのむ。これをすべて人の手で切り出し、積み上げたと想像すると、ただただ圧倒される。
松江市内に残る武家屋敷は、江戸時代の武士の暮らしを今に伝える落ち着いた街並みが魅力。

本当はゆっくりポタリングしたかったが、予定より時間が押していたため、気持ちを切り替えて次なる目的地「大根島(だいこんじま)」を目指す。
中海に浮かぶ大根島

大根島は中海に浮かぶ周囲約12kmの島で、人口はおよそ5,000人。牡丹栽培や火山由来の黒ぼく土で知られる。名前から大根の名産地と思われがちだが、由来には諸説あり大根とは直接関係ないとされている。

大根島に到着して、まず向かったのが島を代表する日本庭園「由志園」。四季折々の景観が楽しめる名所で、大根島を訪れるなら外せない必須ポイントだ。今回のルートでも、その魅力を確かめるべく立ち寄ってみた。

由志園では、大根島の特産品である「高麗人参」を使った加工品などが販売されている。スタッフに話を聞くと、高麗人参は非常に貴重で高価だったため、外部の目を避けて守る目的で、あえて「大根島」と呼ばれるようになったという説もあるのだとか。

正直、男ふたりで日本庭園を眺めてもどうだろうと思っていた。ところが実際に足を踏み入れると、その完成度の高さとスケール感に一気に引き込まれる。立体的に作り込まれた庭に広がる、色鮮やかな紅葉の景色。思わず立ち止まり、心がすっと洗われていくのを感じた。

あまりの紅葉の美しさに、思わずけんたさんに「俺の写真を撮って!」とお願いしたくなるほど。カメラの腕も機材も申し分ないはずなのに、なぜかポーズは“おばさま風”に。それはさておき、自然とシャッターを切りたくなるほど、ここは本当に美しい場所だった。

訪れたのは冬だったため、由志園名物の牡丹が咲き誇る季節ではなかった。……が、そこは抜かりなし。園内の温室では一年中牡丹を鑑賞できるという万全の体制。「季節外れで残念」は通用せず、しっかり牡丹も楽しませてもらった。

日本庭園で心をすっかり浄化したあとは、カフェ休憩を求めて島内の路地へ。ナビもあえて見ず、どこに続くかわからない細い道を進んでいく。この「たぶん合ってるはず…」という感覚こそ、自転車旅ならではのワクワクだ。

島の南側に出ると、ちょうど雲の隙間から夕陽が顔を出すタイミング。湖面に差し込む光があまりに神々しく、思わず「やばい!」と声が出て足が止まる。曇り空が続いた一日だったからこそ、このご褒美のような瞬間が、いつも以上に心に深く刻まれた。
大根島で気になるカフェ「DAIKON」

けんたさんが事前にリサーチして目をつけていたカフェ、その名も「DAIKON」。大根島の南側に位置し、コンテナハウスを改装したユニークな佇まいが目を引く。島の空気感にも不思議と馴染んでいて、「ここは間違いない!」と入る前から期待が高まる一軒だ。

店の敷地からは中海を一望できる絶景が広がる。あまりにも美しい夕景にテンションが一気に跳ね上がり、気づけば珍しく2人で写真を撮りまくる事態に。旅の締めくくりにぴったりな、ご褒美のような時間だった。

夕陽に染まる中海を前に、太陽のエネルギーを全身で浴びる。冷えた空気の中でも、光に包まれると不思議と心も体もじんわり温まっていく。こんな瞬間に出会えるからこそ、自転車旅はやっぱりおもしろいと、改めて実感した。

撮影をひと通り終えて店内へ。大きな窓の向こうには中海が広がり、その景色を眺めながらゆったりと食事を楽しめる。外で感じた余韻をそのまま連れ込んだような、穏やかで心地よい時間が流れていた。

思いのほか距離を走っていたこともあり、甘いもの欲が一気に爆発。迷わずチョコレートパフェとホットコーヒーを注文する。外はしっかり寒いのに、身体が糖分を求めていたのか、気づけばあっという間に完食。ロケーションの良さに加え、マスターのほどよい距離感の接客にも癒される、文句なしのカフェ時間だった。

日没が近づいてきたため、旅のゴールとなる「米子鬼太郎空港」を目指すことに。大根島から空港までは約10kmと意外と近く、「もう着いちゃうのか…」と少し名残惜しい気分。夕暮れの景色を横目に、旅の余韻を噛みしめながら最後のペダルを踏み進めた。
旅のラストは名物橋「ベタ踏み坂」

この旅、最後のスポットにふさわしい名物橋が江島大橋。大根島と空港側の半島を結び、遠くから見るととんでもない激坂に見えることから「ベタ踏み坂」の愛称で知られている。車のアクセルをベタ踏みしたくなる独特のシルエットは有名だが、自転車で向き合うと「本当に行くのか…?」と一瞬ためらってしまう迫力だ。

周囲に高い建物がないため、遠目ではより激坂に見える江島大橋。自転車も車道を通行できるが、道幅が狭いため不安な場合は歩道を押して進むのがおすすめだ。急勾配の登りは約700m、橋全体の長さは約1.45km。最大勾配は島根県側で6.1%となっている。

一気に坂を登り切り、そのまま空港を目指して進む。空港側の下りは勾配がやや緩やかとはいえ油断は禁物。途中、橋のつなぎ目に段差があるため、注意しながら慎重に下っていく。
空港ゴール、そのまま帰路へ

無事にスタート地点でもあった米子鬼太郎空港でゴール。コインロッカーに預けていた飛行機輪行袋を取り出し、輪行準備を進めてチェックインへ。空港内の更衣室は無料で利用できるのもありがたく、着替えを済ませて気持ちよく帰路についた。

島根県側のライドは、国宝・松江城や大根島の日本庭園など、日本の歴史と美しさをしっかり味わえる見どころが満載。中海周辺は交通量も少なく、アップダウンも控えめで全体的にフラット。景色を眺めながら余裕をもって走れるため、初心者でも「思ってたよりいけるぞ」と感じられるルートだ。観光とサイクリングのバランスが絶妙で、気づけば満足度の高い一日になっていた。

2県分おいしい、山陰ライド総まとめ
山陰地方1泊2日の旅は、米子鬼太郎空港を起点に、2つの県の魅力をぎゅっと詰め込んだ満足度の高い内容だった。
1日目は鳥取県を走り、ゲゲゲの鬼太郎や名探偵コナンといったアニメコンテンツを巡る、テンション高めのポップなライド。2日目は一転して島根県側へ入り、松江城をはじめ、日本の歴史と美にじっくり浸る落ち着いた時間を楽しむ。
走って、食べて、眺めて、また走る。両日を通して感じたのは、観光スポットだけでなく、食文化の奥深さと地域に根付いた文化度の高さだった。
ひとつの空港を拠点に、性格のまったく違う2県を味わえるこのルート、「思ってた以上にアリ」です。次の旅先に迷っているなら、ぜひ候補に入れてみてほしい。
旅のしおり
| 8:00 | ホテル「望湖楼」を出発 |
|---|---|
| 8:30 | 倉吉駅に到着 |
| 9:20 | 倉吉駅から電車輪行 |
| 10:00 | 米子駅に到着 |
| 10:30 | ライドスタート |
| 12:00 | 舶来屋でランチ |
| 13:45 | 松江城に到着 |
| 15:00 | 由志園に到着 |
| 16:15 | DAIKONで休憩 |
| 17:00 | ベタ踏み坂を渡る |
| 18:00 | 米子鬼太郎空港でゴール |
| 20:00 | 飛行機で羽田空港へ |





