2024/03/28
さらに進化したアジア最大の「TAIPEI CYCLE 2024」現地レポート!
TAIPEI CYCLE 2024は3月6日~3月9日まで行われる超巨大自転車展示会。
今回ディスカバーライドは、展示会と関係者のみのイベントRide Together を体験しに行ってきました。
台北南港展覧館(TaiNEX)には、3500ブース、950の出展団体が30か国から集まり、メリダやジャイアントなど、スポーツバイクメーカーの有名どころはもちろん、近年興隆著しいE-Bikeの特化エリアが新設されました。
今回の展示会のスローガンは「Envision A Better Cycling World(よりよい自転車の世界を思い描く)」。
このスローガンを起点に、「マイクロモビリティ(近距離・少人数・小容量の輸送車両)」、「グリーンアクション(環境への取り組み)」、「スタートアップ&イノベーション」、「カルチャー&ライフスタイル」の4つのテーマに展開され、自転車が作るよりよい世界のイメージや具体的な道のりをブースやワークショップ、プロダクトを通して発信しています。
…という壮大なスケールには似つかわしくないほど小さな入口からスタート。
まず入ってすぐは、主催の台湾貿易センターと台湾自転車輸出協会が開催する、「台北サイクル d&i アワード(Taipei Cycle design & innovation Awards)」の受賞製品が並びます。
軽量設計、インテリジェントな機能、二酸化炭素削減などの観点が重要視され、素材の選定から製造工程まで、工夫を凝らされたプロダクトがずらり。
エアロな一体型フレームのE-Bike。日本では未発売
モノを運ぶ、近距離を手軽に移動する、という面からもE-Bikeは機能的。日本ではまだまだ種類が少ないカーゴバイクタイプ。
ヨーロッパの道路幅規格に合わせて作られたこちらのカーゴバイクはなんと折り畳み(!)。
サイコンをスマートに収めるマウントシステムはさりげなくベルまで一体化されています。
2日目は商談会がメインで、一般見学はまだないものの、会場はかなりのひと入り。
まずは1号館の1階から見学をスタート。
このエリアで目を引くのはKPLUSのブース。洗練されたデザインと繊細なカラーが人気の高級ヘルメットブランド。
今年はアイウェアがお目見え。耳にかけるツルとノーズパッドは、針金入りで、フィット感を自由に調整できる。
蜘蛛の巣をイメージしたデザインが印象的なヘルメット「Aura」と一緒に着用!AuraはUS$260(4万円前後)で今年の夏から日本でも販売予定。
自転車で旅をするけんたさんとツッチーは廃タイヤをデザインに活かしたサドルバッグに興味津々。
内袋はすべてPET素材なので、リサイクル時にパーツごとに分別しなくてよい工夫がされています。サステナビリティを意識したアイテムの試作品。
サイコンマウントでD&iを受賞したメーカー、ready go ブースでは、装着してもテールライトの光が疎外されないサドルバッグを発見。透明なパーツをおしゃれに組み込んでいます。
パーツメーカーが軒を連ねる1階エリアを見て回るだけで相当の情報量。目と脳が追いつきません。若干クラクラしながら4階へ。
4階の真ん中にはメリダ・ジャイアント・シフト・ダホンと、台湾を代表するメーカーがひしめきあっていて、シマノやピナレロなども軒を連ねメインどころがずらり。
GIANTブースのフロントを飾るのはTCR Advance。
近年は珍しい、シートポストが一体型になったフレーム。
自分のサイズに合わせ、200万円近くする車体のシートポストをカットする…想像するだけで緊張します。
もともとエコフレンドリーな自転車ですが、今回の展示会ではその製造工程もいかに環境への配慮がされているかが大きく取り上げられています。
ジャイアントのブースにかかげられているのキーワードは『a Trail to Zero』。環境への影響を限りなくゼロにしていく姿勢を表しています。
このTCRも、カーボンフットプリント(製造工程で排出された温室効果ガスの量を二酸化炭素換算にした表記)が表示されています。
ヘルメットの部材も素材のうち50%は再利用の発泡スチロール。
リサイクルがしやすいプラスチックフリーの梱包材を什器として効果的に活用し、展示にも工夫が凝らされています。
よく見れば展示会の立て看板も、段ボールベースで作られています。
断面をあえて見せ、素材の選定から「グリーンアクション」をアピール。
GIANTのレポートをしていたところで、台湾一周の台南エリアでお世話になったリンダさんが声をかけてくれました!
リンダさんはいま台湾で最も人気な自転車インフルエンサーの一人。展示会のライブステージで1日中MCをしたり、各ブースを紹介して回ったりと大忙しです。
日本ではなかなか見ない台湾自転車メーカー、TRIGONブースの展示車体は美しいカラーリングが目を引きます。
オーロラの様に映ろう複雑なパターンもあれば、
絶妙なニュアンスカラーの2トーンで山なみを表現したようなデザインもいい感じです。
今回のライドイベント「Ride Together」ではTRIGONのレンタルバイクを借りられる予定、どんな乗り心地なのか楽しみ。
そのほか、今回、スポーツバイクとは別に目を引いたのは「タフで大容量の輸送が可能な自転車」。
E-Bikeのバッテリーが小型化と同時に、よりパワフルで自由な形に進化していくことで、運べる荷物の量もスケールアップされ、車体のデザインも様々なバリエーションに展開。
スクーターやバイクなどとの間にあった境が曖昧になるほど「自転車」の概念の再構築が行われているようなプロダクトがたくさん。
大宮E-Bikeの旅でツッチーが土鍋を運んだのと基本同じ感覚で(ただ、もうちょっとカッコよく)、さらに携帯の充電など電源供給機能も備えているタイプのものも。
昨今日本では、災害時の持ち出し用の大容量バッテリーが人気ですが、この自転車が荷物搬送と電気供給の機能を兼ねる非常時の設備として活躍することもできるかも。
重量のある荷物を載せても安定させるため、3輪構造になった車体も多く見られました。
こちらは実験的なプロダクト。電動キックボードのような見た目ですが、前が二輪で、より安定した乗り心地。荷物と人間を載せて、でこぼこも上手に乗り越えます。
午後から合流してくれたサムさんと3人で会場を回っていると、初めてのインターナショナルなフォロワ―に遭遇!
声をかけてくれたのはシンガポールから来たTonyさん。
なんと台湾一周動画をみて台湾に来たのだそう。
E-Bikeエリアで一番テンションが上がったのがOFllTOのバイク。
アジア人の体に合わせて作られている少し小ぶりなフレームはロードバイクながらエアロっぽい一体型。
コントラストの効いた2トーンのカラーリングと直線的なハンドルのラインは街中で乗ったら間違いなく目立ちます。
このバイク、バッテリーを積んでない普通の車体も、まるでE-Bikeのようで、デザインにほとんど差がありません。
本来バッテリーが入ってそうな部分は小物を入れるスペースになっています。
「いかにE-Bikeを普通の自転車のデザインに寄せるか」が昨今のスポーツバイクの当然とも言えるデザインの流れでしたが、ここにきてそのコンセプトが逆転。「E-Bikeがデザインベースで、バッテリー無しのパターンもあり」という発想の自由さが一つ飛びぬけている感じです。
ちなみにかなり軽い。E-Bikeでも12kgくらい。E-Bikeでない車体は10kg切っています。お値段もE-Bikeは50万円くらいでE-Bikeではない方は40万円程度とほとんど差がない。
ライトも組み込まれてあって、10万円の差ならE-Bikeを選ぶ人も多そうです。
まだ日本では未発売ですが、販売の機会を探しているそうなので近い将来国内でお目にかかれるかもしれません。
最後に一行の目が釘付けになったのは、パーツのほとんどがリサイクルのプラスチックで作られたこちらの車体。
重さとか軽さとか、そういうことはさておき(?)アイディアを形にして世に出してみたというチャレンジ精神が素晴らしい。
雨や水にも強そう、これまでの自転車にはないほかの強みがありそうです。
試乗コーナーも大人気。
E-Bikeの内部機構を大手メーカーにOEMしているCOYOTEは、最新のユニットを体感できる車両を試乗用に出していました。超軽量でバッテリーやモーターが搭載されているとは信じがたいほど洗練されていて、試乗会場でも大人気。
静かさ、スムースさは一度乗ったら病みつき。ツッチーも思わず「台湾の追い風に押されて乗っているかのようだ」とつぶやいてしまうほど。
ペダリングにぴったり寄り添う自然な加速は自分の脚力がレベルアップしたかのような錯覚を起こします。
そのほか子ども用ランニングバイクのバッテリー搭載型や、
リハビリトレーニングに着想を得た2人乗りのタイプ(観光地にあったら楽しそう!)など、思わず「自転車ってなんだっけ」と思わされるような、そもそもの自転車のイメージが根底から揺れてしまうほど、バラエティー豊かに試乗車がそろっています。
まとめ
アジアを代表する巨大自転車メーカー、日本未展開のイケてるブランド、あまたのパーツメーカー・サービスがひしめき合うTAIPEI CYCLE。
今年もアジア最大の展示会は新しいアイディアや観点を取り込み、さらにエキサイティングな進化を遂げていました。
日本の自転車イベントでは、主にスポーツバイクや、レジャーを打ち出すものが多いですが、この展示会では「世界各国に展開できるインフラ」としてもフォーカス。
実際に会場に訪れることで、人と環境に寄り添う方法のさらなる追及や、使われ方・作られ方・世界が自転車に見出す価値の変化まで、肌で感じることができた素晴らしい機会でした。
これからも、世界から熱い視線を集めながらTAIPEI CYCLEは進化することでしょう。また来年の展示を楽しみにしたいと思います!
次回のTAIPEI CYCLEは2025年3月26日~3月29日を予定しています。