東京から電車で約2時間で訪れるいわき市は、フラと温泉と日本の近代化を牽引した「炭鉱産業」の町。当時使われた炭鉱史跡や歴史を伝える資料館をタンデムバイクで巡る。

けんたさん・旅のしおり

08:45  湯本駅からライドスタート
09:00  「ノレル?」に到着・休憩
09:30  「ノレル?」を出発
10:00  みろく沢炭砿資料館に到着・見学
11:20  みろく沢炭砿資料館を出発
12:00  FAROでランチ
13:00  風サイクルで溶接体験
13:45  新舞子ハイツに到着
14:00  新舞子ハイツを出発
14:45  颯サイクルに到着・休憩
15:30  颯サイクルを出発
16:00  ワンダーファームでBBQ
18:00  藤屋旅館に到着

終了!

タンデムバイクで行く福島・いわき1泊2日の旅
タンデムバイクで行く
福島・いわき1泊2日の旅
湯本駅からスタート

湯本駅からスタート

今回使用する自転車は、日本パラサイクリング連盟からお借りしたロードタイプのタンデムバイク(DURATEC)。1泊分の着替えをバイクパッキングした。サポートライダーには、いわき市に詳しい日本パラサイクリング連盟の権丈さん。

湯本駅からスタート

タンデムの前に乗車する人は「パイロット」、後ろに乗る人は「ストーカー」と呼ばれ、パイロットがハンドル操作、ブレーキ、変速を行う。ストーカーはハンドル操作をすることはできないので、パイロットに身を任せてペダルを踏む。今回、けんたさんが「パイロット」となり、つっちーが「ストーカー」で挑戦してみた。漕ぎだしのタイミングを合わせるまでに少し時間がかかるがコツを掴むと楽しい。

いわき自転車文化発信「ノレル?」

いわき自転車文化発信「ノレル?」

湯本駅から15分ほど走って最初のスポットに到着。クエスチョンマークが特徴的な施設名「ノレル?」はその名の通り、「自分でも自転車に乗れるだろうか?」と思っている人へ「誰でも自転車に乗れる」ことを伝えるため、自転車にまつわる情報発信やワークショップを行う交流施設。自転車の販売はもちろん、メンテナンスや関連書籍も置かれている。

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いわき自転車文化発信「ノレル?」

緑があしらわれたおしゃれな内装は長居したくなる居心地の良さ。飲食スペースもあるので、サイクリングの途中の休憩スポットとしておすすめ。週末には子供向けの「補助輪外し教室」や「パラサイクリング体験イベント」も開催している。
施設の一角には権丈さんが普及・発信を行っている日本パラサイクリング連盟の事務局が入っている。

「ノレル?」を後にした3人は「みろく沢炭砿資料館」を目指す

「ノレル?」を後にした3人は「みろく沢炭砿資料館」を目指す。徐々に息があってきたけんたさんとつっちー。3~5%の坂道に差し掛かると、1人乗りのロードバイクと体の使い方が違うせいなのか、若干キツく感じる。とは言えライドはスタートしたばかり。いつものペースで登りきることができた。
変速はパイロットにゆだねられる。ストーカーがしんどい時は「(ギアを)軽くして!」とコミュニケーションをとりながら調整する。

みろく沢炭砿資料館

みろく沢炭砿資料館

ノレル?から走ること約30分(約8km)で「みろく沢炭砿資料館」に到着。内郷白水町にあるこの資料館は、館長の渡辺秀峰さんの父「渡辺為雄さん」が建てた自宅に隣接する私設博物館。かつていわきが炭鉱の町としてで栄えた頃の歴史や、採掘場で使われていた道具に触れることができる。いわき市に「炭鉱」というイメージがなかったけんたさんは興味津々。

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炭鉱資料館を後にして、いわき駅前のランチスポットを目指す

炭鉱資料館を後にして、いわき駅前のランチスポットを目指す。街中に向かう下り坂では、2人分の荷重が1台の車体にかかるため、スピードが出る。パイロットの背中が眼前のため、ストーカーはほぼ前が見えないのだが、恐怖で体がこわばらせるとパイロットにとっては自転車の操作性が悪くなる。身をゆだねてリラックスすることがコツだそうだ。
(写真はストーカー、つっちーからの視点。)

Guest House & Lounge FARO

Guest House & Lounge FARO

本日のランチはいわき駅前にある「FARO」。1階のラウンジはカフェ&イベントスペースで、2階はゲストハウス。サイクルラックが完備されたサイクリストに優しいお店だった。

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いわき郷土料理のポーポー焼き

いわき郷土料理のポーポー焼き

いただいたのはおすすめメニュー「小名浜さんまのチーズインハンバーグ」。さんまをミンチにしてハンバーグのように丸めて焼くいわきの郷土料理『ポーポー焼き』にチーズを入れたオリジナルメニューだそうだ。

風サイクル

風サイクル

ランチの後は店主がフレームビルダーの「風サイクル」へ。店内にはオリジナルのクロモリフレームを中心とした自転車が並ぶ。オリジナルフレームでも中古のバイクパーツで組み上げたバイクなど、良心的な価格のものも。

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溶接ワークショップ

溶接ワークショップ

店主の矢吹さんは、イタリアの超有名メーカーでフレームビルダーとして修行をされた経歴の持ち主。
「けんたさんの発信力でクロモリバイクの魅力を伝えてほしい!」と、急遽溶接体験が始まった。
ちょうど溶接講座を受けたばかりのけんたさんもノリノリで挑戦。

いわき新舞子ハイツ

いわき新舞子ハイツ

「風サイクル」の次は新しい旅の道連れと待ち合わせをしに、宿泊施設「いわき新舞子ハイツ」へ。
ここはタンデムのレンタルバイクも貸し出すサイクルステーションが併設されている。
待っていてくれたのは、本日のゲスト石井健介さんと久道響子さん。お二人とも後天性の視覚障がいを持っているが、視力を失う前は一人で自転車に乗っていた。
けんたさん達がタンデムバイクで旅をするなら、ぜひ一緒に走りたいと、遠方からはるばる参加してくれた。
けんたさんチームとつっちーチームの2組にわかれ、サイクルステーションでタンデムバイクを借りて走ることに。

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視覚障がいの人と一緒にタンデムバイクに乗る際

視覚障がいの人と一緒にタンデムバイクに乗る際は、事前に手をとってハンドルやサドルの位置、身体が触れる車体のパーツに触れながら確認する。また、走行中は事前に右左折や段差がある旨を口頭で伝え、コミュニケーションを通じてシェアすることが大切。
路面や方向の情報を事前に察知し、後方のライダーに伝えるコツはJCGAの実地練習で習ったことと少し似ている。

いわき七浜海道

いわき七浜海道

2台のタンデムで出発し、「いわき七浜海道」を北上。いわき七浜海道は、復旧・復興事業により整備された防潮堤(高潮の被害を軽減・防ぐための堤防)を活用したサイクリングルート。海岸線に沿って総延長53kmが敷設されている。海が近く、時折り波しぶきを感じられて気持ち良い。

タンデムバイクは前後の距離が近いため風があっても会話ができる。

タンデムバイクは前後の距離が近いため風があっても会話ができる。風景を説明したり、趣味の話をしたり、体を動かしながら自然と会話が弾む。

颯サイクル

颯サイクル

いわき七浜海道を走ること約30分(10km)で休憩スポット「颯サイクル」に到着。ここは地元をこよなく愛する木村店長が経営するレンタサイクルショップ&サイクリスト総合案内所。タンデムバイクのレンタルやガイドサービスもやっている。けんたさん一行が到着した時も、多くのサイクリストが集まる憩いの場となっていた。

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ハンドサイクル集団と合流

ハンドサイクル集団と合流

颯サイクルを後にするといよいよ本日のゴール「ワンダーファーム」を目指すのみ。ゴール手前1km地点で待っていてくれたのは、先日、伊豆ベロドロームでお会いした島田さんと松本さんが率いるハンドサイクルライダーの皆さん。
けんたさんがいわきを旅していると聞き駆けつけてくれた。最後はハンドサイクル、タンデムバイク、ロードバイク、多種多様な自転車が集まって、一同ワンダーファームへ。

ワンダーファーム

ワンダーファーム

本日のゴールは1年中トマト狩りが楽しめる「ワンダーファーム」。敷地内にはキャンプ場もあるので、家族や友人などキャンプ泊も可能。レストランもあるので初心者キャンパーにもおすすめ。

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みんなでワイワイBBQ

みんなでワイワイBBQ

施設のサービス「手ぶらでBBQ」をみんなで楽しむことに。
食材が焼けるころには、いつの間にやら友達や知り合いが集まり、地元の人たちのカジュアルなアウトドアパーティーの様相で、もはや誰がライダーかわからない(笑)。
地元の人、遠方からの人、ライダーかどうか、分け隔てなくふんわり受け入れてくれる雰囲気は、福島・いわき市の人々ならではの温かさなのかもしれない。
自転車に乗りたい人なら誰でも歓迎してくれる「ノレル?」が、福島・いわき市にあるのも理解できる気がした。

藤屋旅館

藤屋旅館

バーベキューを終えてワンダーファームから約4kmの距離にある玉山温泉へ向かう。本日泊まるのは玉山温泉にある宿の1つ、築100年を越えた木造2階建ての「藤屋旅館」。
第二次世界大戦の時は疎開先として利用されたのだそう。
立派なたたずまいの入口に立つと、ふいにおばあちゃんの家を訪ねてきたかのような懐かしい感覚に。
館内は隅々まで磨き上げられていて、一世紀以上にわたり様々な事情の人々を温かく迎え入れていた懐の深さを感じた。

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初めてのタンデムバイクでの旅

初めてのタンデムバイクでの旅は、約40kmという短い距離だったが、とても充実した内容だった。
特に印象的だったのが、息を合わせて走るタンデムバイクそのものの面白さ。

ストーカーがパイロットに安心して体を預けられるよう、パイロットは常にハンドル操作や、変速操作を考えながら走ることが必要。コツを掴むまでは少し時間がかかるが、お互いの息があってくると、ペダリングや車体バランス、ハンドルの振動までも共有する「誰よりも近い相手」になることができる。
初対面でもこれだけ密に感覚を共有すると、自然と会話もはずむ。シンプルな道をただ走るだけでも楽しい。

伊豆のベロドロームでタンデム競技の木村選手が言っていた「タンデムの魅力の1つは同乗者2人で作り上げていくこと」という言葉を思い出した。
この魅力と醍醐味はけんた&つっちーペア、初対面同士、健常者2人でも、障がいをお持ちの方と乗っても、1ミリも変わらない。
タンデムバイクは、ペダルを通じて人を繋ぐことができる、魅力的な乗り物だった。

今回立ち寄った場所

ノレル?

ノレル?

みろく沢炭砿資料館

みろく沢炭砿資料館

Guest House & Lounge FARO iwaki

Guest House & Lounge FARO iwaki

風サイクル

風サイクル

いわき新舞子ハイツ

いわき新舞子ハイツ

颯サイクル

颯サイクル

ワンダーファーム

ワンダーファーム

藤屋旅館

藤屋旅館

出会った人

サポートライダー:権丈 泰巳さん

サポートライダー:権丈 泰巳さん

みろく沢炭砿資料館館長:渡邉 秀峰さん

みろく沢炭砿資料館館長:渡邉 秀峰さん

風サイクルオーナー:矢吹 充さん

風サイクルオーナー:矢吹 充さん

ゲストライダー:石井 健介さん

ゲストライダー:石井 健介さん

ゲストライダー:久道 響子さん

ゲストライダー:久道 響子さん

ゲストライダー:ハンドサイクルの皆さん

ゲストライダー:ハンドサイクルの皆さん

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ROUTE

「タンデムバイクで行く 福島・いわき1泊2日の旅」DAY1のルート&おススメスポットについて

JR常磐線の湯本駅をスタート、「みろく沢炭砿資料館」を目指し、緩めのヒルクライム。「みろく沢炭砿資料館」で炭鉱の歴史に触れたら、「FARO」でランチ休憩。いわき新舞子ハイツでゲストライダーと合流したら、海を横目に「いわき七浜海道」を北上し、「ワンダーファーム」を目指す。最後は玉山温泉にある「藤屋旅館」で一泊。

走行距離:45km
獲得標高:360m

スタート地点:JR湯島駅
ゴール地点:ワンダーファーム